東京地方裁判所 昭和52年(特わ)1435号 判決 1977年10月31日
本店所在地
東京都千代田区神田佐久間町一丁目一四番地
株式会社新井商店
(右代表者代表取締役新井正一)
本籍
東京都台東区蔵前四丁目一一番地二
住居
東京都目黒区平町二丁目一〇番二一号
会社役員
新井正位
大正四年一一月一〇日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官五十嵐紀男出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社新井商店を罰金六〇〇万円に、被告人新井正位を懲役六月にそれぞれ処する。
被告人新井正位に対し、この裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社新井商店(以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、鮮魚、海産物の卸小売等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人新井正位(以下「被告人」という。)は、被告会社の会長であり、その実質的経営者として被告会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部除外をする等して簿外預貯金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四八年六月一日から同四九年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三一三五万九六五〇円あった(別紙(一)の修正貸借対照表参照)にもかかわらず、同年七月三一日、東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一三三万〇七六〇円でたれに対する法人税額が五三万二〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一七五一号の符号二)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額一一八二万三六〇〇円(税額の算定は別紙(二)の一計算書参照)と右申告税額との差額一一二九万一六〇〇円を免れ、
第二 昭和四九年六月一日から同五〇年五月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が五四〇一万一〇三〇円あった(別紙(二)の修正貸借対照表参照)にもかかわらず、同年七月三一日前記神田税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九七五万〇五一六円でこれに対する法人税額が三〇六万円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二〇七六万四四〇〇円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額一七七〇万四四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書(一〇通)及び検察官に対する供述調書(乙1ないし11)
一 新井正一の大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)及び検察官に対する供述調書(甲2ないし5)
一 新井すみ子の大蔵事務官に対する質問てん末書(三通、甲6ないし8)
一 荒山英男の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲9)
一 東京法務局登記官作成の登記簿謄本(甲1)
一 押収にかかる総勘定元帳三冊(昭和五二年押第一七五一号の符号四ないし六)
第二 別紙(一)、(二)の各修正貸借対照表の各勘定科目「過年度金額」及び「当期増減金額」のうち、
(イ) 「現金」(別紙(一)<1>、同(二)<1>)につき、
一 大蔵事務官作成の期末現金検討表(甲10)
(ロ) 「普通預金」(別紙(一)<3>、同(二)<2>)につき、
一 大蔵事務官作成の普通預金期末残高および利息調査書(甲11)
(ハ) 「定期積金」(別紙(一)<4>、同(二)<4>)につき、
一 大蔵事務官作成の定期積金調査書(甲20)
(ニ) 「定期預金」(別紙(一)<5>、同(二)<5>)につき、
一 大蔵事務官作成の定期預金各期末残高および利息調査書(甲24)
(ホ) 「たな卸商品」(別紙(一)<6>、同(二)<10>)につき、
一 大蔵事務官作成のたな卸商品在高調査書(甲30)
(ヘ) 「売掛金」(別紙(一)<7>、同(二)<11>)につき、
一 大蔵事務官作成の売掛金調査書(甲32)
(ト) 「仮払金」(別紙(一)<8>、同(二)<9>)につき、
一 桃園典二の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲37)
(チ) 「車輛運搬具」、「機械設備」、「設備造作」及び「繰延資産」(別紙(一)<9><10>、同(二)<12><13><14><24>)につき、
一 大蔵事務官作成の償却資産の調査書及び定率法による減価償却資産の償却の計算調査書(甲38、39)
(リ) 「出資金」(別紙(一)<14>、同(二)<17>)につき、
一 大蔵事務官作成の出資金および配当金調査書(甲40)
(ヌ) 「貸付金」(別紙(一)<16>、同(二)<19>)につき、
一 大蔵事務官作成の貸付金調査書(甲43)
一 新井正一作成の「新井正位に対する貸付金について」と題する申述書(甲44)
(ル) 「保険積立金」(別紙(一)<17>、同(二)<20>)につき、
一 大蔵事務官作成の保険積立金調査書(甲45)
(ヲ) 「買掛金」(別紙(一)<19>、同(二)<25>)につき、
一 大蔵事務官作成の買掛金調査書(甲46)
(ワ) 「未払金」(別紙(一)<20>、同(二)<26>)につき、
一 大蔵事務官作成の未払金調査書(甲47)
(カ) 「借入金」(別紙(一)<21>、同(二)<28>)につき、
一 大蔵事務官作成の借入金調査(甲51)
(ヨ) 「預り金」(源泉所得税、社会保険料期末未納分(別紙(一)<22>、同(二)<29>)につき、
一 大蔵事務官作成の預り金調査書(甲55)
(タ) 「未納事業税」(別紙(一)<23>、同(二)<30>)につき、
一 大蔵事務官作成の未納事業税調査書(甲56)
(レ) 「前渡金」(別紙(一)<25>、同(二)<21>)につき、
一 大蔵事務官作成の前渡金調査書(甲57)
(ソ) 「前払金」(別紙(一)<28>、同<22>)につき、
一 水上馨作成の上申書(甲60)
(ツ) 「役員賞与」(別紙(一)<29>、同(二)<36>)につき、
一 大蔵事務官作成の給与調査書(甲61)
(ネ) 「繰越欠損金控除」(別紙(一)<31>)につき、
一 大蔵事務官作成の修正貸借対照表(48/5期)(甲63)
(ナ) 「積立預金」(別紙(二)<6>)につき、
一 大蔵事務官作成の自由積立預金調査書(甲64)
一 新井正一作成の「当社に帰属する自由積立預金について」と題する申述書(甲65)
(ラ) 「通常貯金」(別紙(二)<7>)につき、
一 大蔵事務官作成の通常貯金各期末残高および利息調査書(甲67)
(ム) 「定額貯金」(別紙(二)<8>)につき、
一 大蔵事務官作成の定額郵便貯金各期末残高および利息調査書(甲69)
(ウ) 「仮払源泉所得税」(別紙(二)<23>)につき、
一 大蔵事務官作成の仮払源泉所得税調査書(甲72)
(ヰ) 「未払源泉所得税」(別紙(二)<27>)につき、
一 大蔵事務官作成の未払源泉所得税調査書(甲75)
第三 同右「公表金額」及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる法人税確定申告書二袋(前同号の符号二、三)
(法令の適用)
第一被告会社につき、
一 判示各所為
各法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項
一 併合罪加重
刑法第四五条前段、第四八条第二項
第二被告人につき、
一 判示各所為
各法人税法第一五九条第一項(いずれも懲役刑選択)
一 併合罪加重
刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重)
一 執行猶予
刑法第二五条第一項
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一)
修正貸借対照表
株式会社 新井商店 昭和49年5月31日
修正貸借対照表
株式会社 新井商店 昭和50年5月31日
別紙(三)の一
ほ脱税額計算書
株式会社 新井商店
自 昭和48年6月1日
至 昭和49年5月31日事業年度分
別紙(三)の二
ほ脱税額計算書
株式会社 新井商店
自 昭和49年6月1日
至 昭和50年5月31日事業年度分